◆◇◆◇◆◇⇒《カダイ・ラボ》
「ナチュラル・ヒストリーを科学する
−屋久島の高山性ミニチュア植物の研究を例に−」・・・・・・・・・・・・・・・・・篠原 渉
私たちの住んでいる世界のありようを理解する方法はいくつもありますが、私たちのまわりにどんな生き物がいるのか、またそれらの生き物がどのように生活して
いるかを理解することも、世界のありようを理解する方法のひとつだと思います。
私たちの身の回りの生き物は、動物や植物はもちろんのこと、カビや大腸菌でさえ、
私たち人間と同等に長い進化の歴史の末に残った、進化の最先端にいる生物です。
では地球にはいったいどのような生き物がいるのでしょうか?実はその種類、生き様、歴史については、いまだにわかっていないことがたくさんあり、これらの研究はナチュラル・ヒストリー(博物学)と呼ばれています。ナチュラル・ヒストリ
ーの研究はDNAやタンパク質など分子レベルの解析技術の向上により、近年、新し
い展開をみせています。私の研究室では次世代シーケンサーなどの最新のDNA解析
技術を駆使してナチュラル・ヒストリーをより深く追求することを目指しています。
私が今もっとも興味をもっているのは屋久島の高山性ミニチュア植物の研究です。
屋久島の高山性ミニチュア植物とは鹿児島県の屋久島の標高の高い場所で小型化している植物たちのことです。たくさんの人に私の研究を知ってもらうために「ミニチュア植物」という言葉を(勝手に)造って宣伝しています。この研究を始めるにあたって、私はまず小型化がどのようにおこっているのかということに興味をもちました。例えば一口に小型化といっても花と葉と茎と根の小型化の比率は同じなのでしょうか?また生物は細胞から構成されているのですが、細胞レベルの小型化メ
カニズムはどのようになっているのでしょうか?細胞のサイズを小さくしているのでしょうか?細胞の数を減らしているのでしょうか?あるいはその両方でしょうか?さらに異なる植物種間で器官レベルと細胞レベルの小型化メカニズムは同じなのでしょうか?
このように自分で研究の切り口を決められるのも研究活動の魅力の一つです。私の分野ではこの切り口のおもしろさが研究の価値を決定しているといっても過言ではありません。思いつかないような発想の切り口の研究を目にすると「かしこいネ」
と感心したりします。さて話が横道にそれましたが、ミニチュア植物の器官レベルと細胞レベルの小型化メカニズムの解析はどのような結果になったのでしょうか?
興味がある方はぜひ私の研究室までお問い合わせください。現在は小型化形質をコントロールする分子メカニズムを解明しようと研究を続けています。
篠原先生のプロフィールを大学フォト内に掲載していますので、ご覧ください。
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香川大学メールマガジン 第173号 2013年4月30日
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